お人形でやってみたシリーズ

お人形で『ひよっこ』をやってみた (すずふり亭編その2) みね子だよ、お父ちゃん!



運命のいたずらか、みね子がある大女優と出会ったことで

2年前に出稼ぎに出たまま消息を断っていた父、実の情報を

知ることになります。

でもそれは、みね子やみね子の母にとっては

知らなかった方が幸せだったかも知れない衝撃の事実でした。

せつないシーンをお届けする前に

少しでもそのせつなさをやわらげたいと思って

こんな写真を撮ってみました。


あかね坂商店街のトキワ堂薬局の店頭に置かれている

人気者アイドル・いちこ。

無口をいいことに

みんなから悩みを相談されたり、八つ当たりされたり、小突かれたり.....

でも彼女は嫌な顔ひとつみせないで

みんなの気持ちを受け入れてくれてます。


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このいちこは紙粘土で作ってあります。

最初、いちこを作るつもりは全くありませんでした。

テレビを見ながら、無造作に紙粘土をいじっていたら

なんとなくいちこの頭らしきものが出来ちゃったので

試作品を作ってみようかなと思って

そのまま続けていたら思いのほかいちこに似ていたので

そのままいちこにしてしまいました。

紙粘土はダイソーのもので

パステルカラーの色合いがいちこソックリでした。


そして、いちこを作ったからには

やっぱりトキワ堂薬局に置いてみたいなと思って

そこからトキワ堂薬局を作り始めました。

玄関だけしか作ってない簡単なものですが

リーメントの薬屋さんのアイテムをあれこれ並べたら

もう楽しくって.....

基本、作ったセットは写真を撮り終えたら解体してしまうのですが

勿体ないのでもうワンショット撮ってみました。



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ある日、みね子のアパートに世津子がやってきます。

逢わせたい人がいるので自分のマンションに一緒に来てくれないかと

思い詰めたような表情の世津子に

ただならぬ不安を感じながら世津子の後を追うみね子。


「ただいま。今日はお客さんを連れてきた。」


「おかえり、え?珍しいね。

いや、初めてか。」



聞き覚えのある声にみね子は固まります。

なんとそこにいたのは、2年間も消息を経っていた父、実だったのです。

動揺しているみね子に世津子さんが話しかけます。


「あなたのお父さんはね、何も覚えてないの。昔のこと。

自分の名前も、どこで生まれ、育ったのかも.....。

家族のことも。」



「うそだそんなのうそだ!

だって....。だってお父ちゃんですよ!

覚えてないなんてそんなごと あるわげないでしょう!

ねぇ、みね子だよ。お父ちゃん。

どうしたのよ?何でそんな顔してんの!

ねぇ、みね子だよ?」



父親が自分のことを覚えていないという

目の前の現実を受け入れられないみね子。

突然姿を消した父親は

何もかも嫌になってしまったために姿を消したのだと思い込もうとします。

自分のこと、家族のことを忘れてしまったことよりも

そう思った方がはるかに気が楽です。

さらにみね子は言います。

「お父ちゃんがここにいだくて帰りたくないんなら....私

逢わなかったごとにすっから。

今日のこどは忘れっから。それでいいがら。

生きててくれただげでうれしいし。

お父ちゃんのこど、責めるつもりなんて全然ないがら......


んだがら....。

覚えてないなんて 言わねぇで.....。

みね子だよ....お父ちゃん...。」


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なんてせつない展開なのでしょう。

ようやく探しあてたお父ちゃんはかつてのお父ちゃんではありませんでした。

イニシャライズされて都会的で小綺麗になって

みね子に敬語で話す別人のようになっていました。

思わずお父ちゃんの腕にしがみつくみね子の手を

ふりほどきそっと頭を下げる父、実.......。

実さんの ごめんなさい という言葉が

みね子だけでなく私の心にも突き刺さりました。


愛する人が、今まで自分と築いてきた大切な日々を忘れてしまうなんて

どんなに悲しいことでしょう。


「嫌です!嫌です、こんなの! 嫌です!」


耐えきれず外へ飛び出し

降り出した雨の中ひとり佇むみね子。

その姿を追って実がみね子に傘を差し出します。


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そして、実は川本世津子との出会いを話し始めました。

あの日、どうしてケガをしたのかも、自分の名前すらも思い出せず

あちこちさまよって歩き疲れて降りしきる雨の中、

世津子のマンションの敷地内のベンチで座っていたこと。


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その姿を見かけた世津子に傘を差し出され、手当をしてもらい

それを機にここで暮らすようになったこと.....。

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記憶を無くした実を世津子は驚いて

警察へ届けようとしましたが

それを断ったのは実でした。

あちこちケガをして、手も血だらけになっていて

ひよっとしたら自分が人を殺してしまったのではないかと

思ったからでした。



いろんなことが一度に押し寄せてきて

どうしたらいいのかわからないみね子。

とにかくこの事を奥茨城のお母ちゃんの伝えなければ.....



すると鈴子さんが言いました。

手紙を書きなさい。

電話でなくちゃんと気持ちを落ち着かせて

手紙を書きなさい。


そしてどうやって手紙で伝えていいか悩むみね子に

時子がアドバイスします。

みね子の気持ちを書く必要はないと。

みね子が川本世津子さんに対してどう思っているのだとか

実さんの今の暮らしをどう思ったのかは

美代子さんが感じることだから....と。



みね子の周りにはこんな素敵な人達がいるんですよね。

とても一人では乗り越えられない試練も

みんなが支えてあげればきっと乗り越えられるはずです。




「お母さん、お父さんが見つかりました。

お父さんは東京で生きていました。

ただ、信じられないと思いますが

お父さんは記憶をなくしています。

自分の名前も覚えていません。

私のことも、家族のことも、覚えていません。」


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その手紙にはお父さんが女優川本世津子と暮らしていることも

書かれていました。

お母さんはどんな気持ちでその手紙を読んだのでしょうか....

記憶をなくしているということだけでなく

別の女性と暮らしているだなんて.....



そして美代子は仏壇に手を合わせ

引き出しから結婚指輪を取り出し左手にはめ

棚の上に飾ってあった家族写真を持ち

意を決して東京の世津子のマンションに向かいました。

相手は富も名声もある綺麗な大女優。

かたや自分は奥茨城の貧しい田舎で

農業をするだけがとりえの女........


お母さんにとって結婚指輪は

大女優に対抗できる唯一の武器であり

家族写真がお守りだったんですね。



まずは夫を保護してくれた世津子さんにお礼を言う美代子でしたが

夫がいなくなった2年半分の想いが吹き出します。


「どんな思いで私たちが....

私たちが行きてきだか

わかりませんか!考えもしませんでしたか?!

この人に家族はないのだろうか、

その家族はどんな思いでいんだろうかと

考えもしませんでしたか!?」



どうして2年以上もそのままにしていたのか。

もし病院や警察に届け出てくれていたら

夫は家族のもとへ帰ってきたのではないかと世津子に詰め寄ります。


「この子は、いなぐなった父親の代わりに、

家族に仕送りするために東京へ来ました。

この子が

どんな気持ぢで働いでだが、わがりますか?

その仕送りを、

どんな気持ぢで受け取っていだがわがりますか?」


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その言葉にいたたまれなくなり顔をゆがめる世津子。

世津子をかばうように実が口を挟みます。


「それは私が......」


そうです。世津子さんは実を警察に届けようとしていたのに

それを断ったのは実の方でした。

しかし、言いかけた実の言葉を世津子は遮りました。

出て行って欲しくなかった...と。

いけない、間違っていると思いながら。

そのままにしてしまった。

実と一緒にいるのが楽しかったのだと。

確かにこの人は谷田部実さんという人なのかも知れないけれど

ここに来た日から名前のない人で

雨の日に出会ったから雨男さんと呼んでいたこと。

そして実(雨男)がここに来た日から

初めて早く家に帰りたいと思ったのだと言う。

でもそれは許されることではない。

みね子と偶然出会ったのもそういうことだと思う。

そう言って、美代子に頭を下げました。



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世津子は小さい頃に両親と死別し

叔父の家に引き取られたものの

貧しさゆえに学校にも行かせてもらえませんでしたが

家の手伝いの牛乳配達しているうちに映画関係の人と親しくなり

その縁で女優になったそうです。

すべては生きていくために.....


あたたかい家族や家庭を知らないまま

女優という鎧兜をつけて仕事一筋で生きてきた世津子さん。

ずっと孤独だった世津子さんの

唯一の心のよりどころが雨男さんだったのです。


警察には届けないで欲しいと言ったのは実さん。

でもそれを美代子に言わず、

敢えて自分を悪者にしたのは

美代子に対する世津子のせめてもの償いなのかも知れません。



でもみね子は

実自身が警察へ届けないでと世津子にお願いしたことを

知っています。

連絡をしないままここで暮らすことになったのは

世津子さんだけのせいではないのです。



ここに来る前に愛子さんがみね子に言葉をかけました。

みね子はよく言うといろいろな人の気持ちを察する事ができるけれど

悪く言うとどっちの気持ちも察してどっちつかずになってしまう。

だから今日はお母さんだけを見てなさいって。


それを守って、みね子は

母親の言っている言葉だけに耳を傾けます。

世津子さんには可愛がってもらって

いろいろお世話になって感謝しているけれど

今は、夫が2年半も他の女性と暮らしていた事実を知った

おかあさんの悲しい気持ちに寄り添います。



いち視聴者として

母親から父親を奪った世津子さんを憎み

美代子さんだけを応援できたらどんなに気が楽なことか......

でも、今まであたたかい家庭とは無縁だった世津子さんが

雨男さんと出会って生まれて初めてみつけた

家庭のあたたかさ、ぬくもり.....

誰もが持っていて当たり前のささやかな幸せをようやく手にして

雨男さんといるときだけ

女優でなく本来の かわもとせつこ になることが出来たという

世津子さんの気持ちを知っているだけに

世津子さんにも寄り添ってあげたくて

見ていてとっても切なかったです。


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この後、ラストまで一気に書こうと思いましたが

長過ぎてしまうので

一旦ここで区切ることにします。


お人形版ひよっこは、3月にクランクアップ予定でしたが

諸事情により4月にずれ込んでしまいました。とほほ....

残るはあと3シーンを残すのみ。

次回の更新が最終章になります。



お人形でアリーナ・ザギトワをやってみた


2018年平昌オリンピックオリンピック女子シングルでは

ロシア勢のハイレベルな闘いが繰り広げられましたが

その激闘を制したのはロシアの新鋭、15歳のアリーナ・ザギトワでした。

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12歳で親元を離れモスクワに拠点を移し、

リプニツカヤ選手やメドべージェワ選手をはじめ多くのトップ選手を育てて来た

エテリ・トゥトベリーゼコーチに師事。

めきめきと頭角を現し、数々の歴代最高得点を更新し続けています。

オリンピックのフリープログラムに選んだ曲は

赤いチュチュの衣裳を着て、バレエの振り付けを取り入れた

バレエ『ドン・キホーテ』。

ジュニア時代から2シーズン滑りこんでいるだけに自信あるプログラムです。

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バレエ『ドン・キホーテ』は

セルバンテスの小説「ドン・キホーテ」をモチーフとして描かれた

陽気なバジルと粋なキトリの

若い男女の恋物語。

ロシアで活躍した作曲家レオン・ミンクスによって作曲されました。

スペインのバルセロナを舞台としているだけあって

キレのあるスパニッシュダンスの振り付けが多くみられ

ザギトワ選手もそのスパニッシュダンスの振り付けを

要所要所、巧みに取り入れてリズミカルに演技しています。

この闘牛士のようなポーズも

闘牛士と街の踊り子のシーンを表現しています。

真っ赤なチュチュもスパニッシュダンスのイメージからだと思います。


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曲はまず第3幕の華やかなグラン・パ・ド・ドゥで始まります。

バレエでは男女2人が優雅に踊り

男性が女性をリードしたりリフトしたりしますが

不安定な姿勢でも

ザギトワ選手はまるで後ろで男性が支えているかのように

美しい姿勢を保ったまま滑っていて

バレエの舞台がそのまま氷上へと移動したかのようです。


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途中第1幕のアダージョを挟みます。

少し物悲しいワルツのメロディーに乗せて、ギター片手に愛を育むバジルとキトリの姿を

情感豊かに滑っていきます。

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そして再び舞台は第3幕へ。

一番の魅せどころキトリが踊る32回転のフェッテターンを

ザギトワ選手は連続ジャンプのコンビネーションで軽やかに表現しています。



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『ドン・キホーテ』という長い演目をたった6分間で表現するのに

2人の結婚式のシーンのグラン・パ・ド・ドゥの間に、

2人が愛を育んできたシーンを

回想として持ってきたプログラムの構成は粋なはからいだなと思いました。


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疲れが出る後半に

まるで背中に羽根でも生えているかのように

いとも簡単に次々と跳ぶジャンプのコンビネーションは華があり

群を抜いて素晴らしいものですが

得点が加点される後半に全てのジャンプを組み込むプログラムの構成には

賛否両論がありました。

前半部分はただ時間稼ぎにクルクル回っているだけだと悪口もたたかれていましたが

私としてはバレエの要素をふんだんに取り入れられた前半も

見応えがあったと思います。

特に前半の演技でワンフレーズごとに見せる

ちょっとした仕草がとっても可愛くて好きです。

例えば、こんな仕草とか.......

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両手を伸ばして前で交差するこの仕草がなんとも可愛らしくて

大好きなんです。


そして全てを滑りきったあと、フィニッシュのこのポージングも

とってもチャーミングです。


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ところでこの衣裳は、タカラトミーから販売されていた

リカちゃんのドレスの中のアイススケートというドレスセットを

ザギトワ風に改造したものです。

3年程前にアイススケート靴目当てに購入しましたがずっと仕舞い込んでいて

忘れられていた存在でした。

オリンピックでザギトワ選手のフリーの演技を見たとき

あれ?この衣裳どこかで見たことがあると思って

仕舞っておいたドレスを探したところ

ザギトワ選手の衣裳にとても良く似ていたので

さらによく似せるように、袖をとってノースリーブにし

さらにチュチュの丈を短くカットしました。

そしてタイツをベージュに染めて

スケートシューズのブレードをシルバーに塗りました。


この衣裳を販売した3年前は、

タカラトミーのリカちゃんデザイナーもこの衣装を

次のオリンピックでゴールドメダルを獲ったスケーターが着るとは

思いもよらなかったはず。

これはすごい先見の明があったと思いましたが

よく調べてみたら、この衣裳は

ザギトワ選手がオリンピックで着た衣裳というよりは

15歳の頃にメドべージェワ選手が着ていた衣裳に

非常にそっくりでした。

その後その衣裳は同じ門下生であるザギトワ選手に譲り渡され

ザギトワ選手はこの衣裳をジュニア時代に着ています。

ちょうど2014年あたりだったので

このタカラトミーのアイススケート衣裳はそのデザインを

参考にして作られたのではないかと思います。

オリンピックでザギトワ選手が着ていた赤いチュチュは

メドべージェワ選手のお下がりのチュチュではなくて

よりドン・キホーテのテーマに近づけられるように

メドべージェワ選手のお下がりのチュチュのデザインをベースにして

ザギトワ選手のアイデアを取り入れた新しいものに作り直されているそうです。


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このブログ記事を書いている途中で

ロシアの13歳のアレキサンドラ・トルソワ選手がブルガリアで開催された

世界ジュニア選手権で女子では史上初の4回転を2度成功し

昨年優勝したザギトワ選手の記録を大幅に塗り替えて

ジュニア世界最高得点を叩き出したというニュースが流れました。

大会が行われるたびに新たな新星を生み出してくるロシア勢。

4年後の北京ではどんな異次元の闘いが繰り広げられるのでしょうか。



ただ、成長途中である女子の若い選手には

誰でも通らなければならない体形変化の壁があります。

身長が1センチ違っただけで回転軸がずれてしまったり

身体が丸みを帯びることで体重や筋肉の付き方が変ってしまい

昨日まで簡単に跳べていたジャンプが全然跳べなくなってしまったという話を

聞いたことがあります。

もしかしたらその壁を乗り越えるのは、

難しいジャンプを跳べるようになることよりも

ずっと困難なことかも知れません。

いくらジュニア選手権で新星と騒がれていても

その将来は約束されていない過酷なスポーツなのです。



今季までの数シーズンで男子、女子ともジャンプのレベルがアップし

その結果、技術点が大幅に引き上げられました。

男子では4回転を跳べないと優勝できないとまで言われています。

その結果、来シーズンからルール変更が行われ

4回転ジャンプ数の制限や基礎点の引き下げなどが検討されているそうですが

優勝を目指すのにただ単に高度なジャンプを習得するのだけでは

中国雑疑団のようなアクロバット大会になってしまいます。

羽生選手が言っていたように

難しいジャンプを含めたトータルな芸術的な演技を目指してもらいたいなと思っています。







お人形で『ひよっこ』をやってみた (すずふり亭その1) お父さん、働く場所があって仲間がいるって、楽しいです。



前回のひよっこの記事で

「ひよっこ最後のシーンまで

10月中にはとても仕上げられません。

下手したら今年いっぱいかかっちゃうかも?!

そうならないようにがんばっぺ!」

と確かに言いました。

でも今年いっぱいかかるどころか

年が明けてしまいました。

さて、どうなるお人形版ひよっこ........


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向島電機の倒産で

年の瀬に再就職先を見つけられずにいたみね子に

救いの手を差し伸べてくれたのは

かつて帰省した父がお世話になったことのある

赤坂の洋食屋すずふり亭の店主・鈴子さん。

彼女の計らいでみね子はここでホール係として

働かせてもらえることになりました。

いがったね、みね子!

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こちらは1/6サイズで作ったすずふり亭の玄関です。

この玄関のエントランスの制作にはかなりの時間がかかりました。

と言うのも、ドラマを見ている限りでは気がつきませんでしたが

すずふり亭って複雑な多角形で出来ているんです。

この玄関ホールもそうです。玄関の入り口が三角形になっています。



外壁と玄関ドアがどんな角度で作られているのか

今までドラマに出て来たすずふり亭の映像や

ネットでアップされているすずふり亭の画像を何度も見返しながら

木材を切ったり削ったりしてようやく形が出来あがりました。

窓やドアのステンドグラスも

できるだけ本物そっくりのデザインや色にこだわって作りました。

ちなみに、このステンドグラスは

少し厚めのプラ版に、ガラス専用のマーカーで描いたものです。


ところが出来上がって、ネットに上がっていたすずふり亭の画像と見比べてみると

あれ?なんかこれ違う......ってなってしまいました。

あれだけ何度も見直して正確に作ったつもりだったのに

なんでネットでアップされていたすずふり亭の玄関と違ってしまったんだろう.......ガーン

そして気がつきました。

ネットでアップされていた多くのすずふり亭の写真は、

ドラマで実際に使われていたセットではなくて

NHKのスタジオパーク内で再現されていた『ひよっこ展』内でのセットだったのです。

それで窓の大きさや、玄関ドアの彫刻が本物とは

微妙に違っていたのです。

そして私はあろうことに、そのスタジオセットと

ドラマでの実物セットをごちゃまぜにして作ってしまったために

最初から作り直さなくてはならなくなってしまいました。

ほんのささいな違いなので黙っていたら絶対わからない程度だと思うのですが

それに気付いてしまった以上、気持ち悪くて

このまま作り進めるわけには行かなくなってしまいました。

そんなこんなで玄関のエントランス制作にだいぶ時間ロスが出てしまいました。



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すずふり亭は店主の鈴子さんが空襲で焼け出され、

店も夫も失って終戦後に懸命に再建してきました。

清楚な白い外壁に洒落たステンドグラスの窓.....

当時にしてはとてもオシャレで素敵なレストランですが

よく見ると店先に置いてある食品サンプルのガラスケースの裏側や

外壁の下方にはうっすらと苔らしきものが生えてます。


すずふり亭のセットは、ただ綺麗なだけでなく、

わざと経年を思わせるような演出もところどころに見られて

セットの建具や大道具のスタッフさんのこだわりを感じました。

ぼ〜っとドラマを見ていただけでは

なかなか気がつかないことですが

こうして実際にミニチュアセットを作ってみて初めて

プロの大道具さんのスキルの高さに感心しました。

私もそれに見習って、外壁の下方やガラスケースの裏側に

モスグリーンでうっすらと苔のような汚しを入れてみました。

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この食品サンプルのガラスケースをどうやって作ろうかが一番の難関でした。

このセットの大きさに合うようなガラスケースを探しましたが

見つけることができず、諦めて木で棚を作ろうかと思いましたが

それでは見た目の印象がだいぶ違ってしまいます。

家にあったリーメントのショーケースもサイズが合いません。

そこでひらめいたのは100円均一で売っている

間仕切り付きの透明なプラスチックの小物入れでした。

これを二つ組み合わせて接着してみたら

あのガラスケースのような仕上がりになりました。

もともとあった間仕切りも2つ組み合わせたら

ガラスの棚板のように見えます。

薄いバルサ材を小さくカットして作った赤い屋根には

経年の汚れと擦れをつけ、

中にはリーメントの食品サンプルを入れました。


後方のエンジ色のカーテンでよく見えないかも知れませんが

すずふり亭のメニューに載っていそうなサンプルを選んで

手持ちのリーメントの食品サンプルを

ケースに並べる作業がとても楽しくて

シェフの省吾さんや見習いコックの元治さん、ヒデさんが

軽快なやりとりを交わしながら

厨房で作っている姿を思い浮かべ

私の特技である想像の翼を広げながら並べました。


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すずふり亭の外壁はプロバンス風の漆喰になっています。

この雰囲気を出すのも少し苦労しました。

あらかじめオフホワイトに塗った壁に

モデリングペーストを盛っていくのですが

すずふり亭の外壁のような綺麗な半円風のデザインのように均等に盛れず

プラ版で作った自作のコテのサイズを変えては

何度もやり直してました。

すぐに乾いてしまうので、あれこれいろいろ考える暇もありません。

手も顔も髪の毛も真っ白になりながら

盛ってはやり直して、また盛ってはやり直して......

全部塗り終えたのが真夜中の2時でした。



でもだんだん要領がつかめてくると左官屋さんになった気分で

最後の方は楽しく塗れました。

これだったら自宅の外壁も自分で塗れる気がしてきました(笑)


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「お父さん。いよいよ開店です。

緊張します!」




すずふり亭のホール係として働き始めたみね子ですが

案の定、初めて経験する仕事に頭の中は真っ白.....

みね子の周りだけ忙しく時間が過ぎて行って

その時間にみね子だけが取り残されて呆然と立ち尽くすばかり.....

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「ホールの仕事というのは

料理を運ぶだけで簡単そうに見えるかもしれない。

でも簡単な仕事なんて世の中にはない!」

高子さんがみね子に言ったこの言葉はとても重みがありましたね。




「お父さん、

すでに頭の中が 真っ白です....」


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実は私もみね子と同じような経験をしたことがあります。

数年前に友達に頼まれて

お正月に超有名な某お寺の参道にあるラーメン店で

臨時ホール係として5日間働いたことがありました。

ラーメンの種類は味噌と醤油の2種類。

種類は少ないし、ただ運ぶだけでとっても簡単だから手伝ってと言われ

好奇心からやってみてもいいよと気軽に返事をしてしまいました。


ところが......

狭い店内は年配の参拝客で溢れかえり、店の外にも長蛇の列が出来て

仕方なく急遽ご相席にしていただくことになったのですが

あまりにも客の回転が早かったために

テーブルの番号はわかっても、

どの客とどの客が連れ立って入ってきたのかわからなくなってしまい

今、自分が運んでいるラーメンは

このテーブルに座っているどのお客様にお出ししていいのか

頭の中は真っ白になってしまいました。

メニューが2種類しかないというのも

混乱してしまった原因となりました。


ホールの仕事は、ただ出来上がったラーメンを運ぶだけでなく

お客様の注文を取りながら、

お冷やくださいだとか

お会計お願いしますだとかの要求にも対応しなくてはならず

お客様からひと声かかるたびにパニック......

本当に目が回るような忙しさでした。



そしてお客さんの食べ残しの食器を下げようとお盆に乗せて

厨房まで片付けに行く際に何かにつまづいて

奥で食器を洗っていたスタッフさんに

下げてきたラーメンの器を頭からぶっかけてしまった悪夢のような

おぞましい記憶が蘇ってきました。



みね子のとろさにハラハラしながら見ていました私ですが

よくよく考えたらみね子以上にとろかった.......はぁ...

今思い出してもぞっとする....。

高子さんの言葉がみね子以上に心に染みます。




初日から失敗続きのみね子でしたが

すずふり亭の先輩方やあかね坂商店街の人達のフォローもあって

次第にホールの仕事の段取りも覚え

働くことの大切さや喜びを感じていくようになりました。



「お父さん。

こんな一日を、私はこれから繰り返していくんですね。

働く場所があって、仲間がいるって、楽しいです。」



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こちらの野菜は全て茨城産です←ウソ

以前お人形で「あさが来た」をやった時に

はつさんが畑で作っていた野菜の使い回しです。

樹脂粘土製ですが、劣化もせずに残っていてくれてよかった〜〜




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さて、そんなみね子ですが、

乙女寮の仲間達との同窓会で貸切りにしていたすずふり亭に

たまたま入店してきた人と運命の出会いをします。

その人の名は、川本世津子。

今をときめく大女優です。




「素敵なお店ですね。今度寄らせてくださいね。」


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貸切り状態だった店を無理矢理開けさせようとしたスタッフを咎め

潔く身を引いた世津子さん、かっこいい〜

ただ、帰りぎわでみね子と時子がしゃべっていた奥茨城の方言を耳にした世津子は

わざわざ店内に戻ってきます。



「あの.....2人ともさ、それ、どこの言葉?

へぇ...茨城かぁ....そうか......。」



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このくだり、なんか嫌な予感がしてなりませんでした。

もしかしたら失踪しているみね子のお父さんに関することを

この大女優さんは知ってるのではないか......。


案の定、世津子さんは

みね子の父である実に関する重大な鍵を握っていたのですが

この時はまだ

みね子も、世津子も知る由もありませんでした。



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アパートの住民やあかね坂商店街の人達とのふれあい、

懐かしい乙女寮の仲間との再会、

初めての恋、そして失恋.....を経験し

人間的にも少しずつ成長していくみね子に飛び込んで来た

生放送のコマーシャル出演。

なんでも、当日出演する予定だった女優さんが急病で来られなくなり

たまたま近くにいた年格好の似ているみね子が

ピンチヒッターとして生放送のコマーシャル出演を頼まれてしまったのです。



この出来事が、

後にみね子の運命を大きく変えることになります。



みね子がコマーシャルで言うべき言葉はたった一言。

笑顔で「お父さん、今日も一日ありがとう!」

でも、みね子はどうしても言う事が出来ません。

お父さん....思い出しただけでも涙が出て来てしまうのに

笑顔でお父さんだなんて呼びかけられるはずがありません。

何度もNGを出して落ち込むみね子を

たまたま偶然テレビ局で出会った川本世津子が励まします。





「お父ちゃん、今日も一日ありがとう!」

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世津子と話す事によってようやく落ち着きを取り戻したみね子は

本番ではなんとか台詞を言えたものの

笑顔ではなく泣き出してしまったみね子の様子を見て

世津子はその涙の理由を尋ねます。

そして、みね子の父が二年前に出稼ぎに出たまま行方不明になっていること。

その父を思い出して泣いてしまったこと....。

みね子の口から次々と明かされる身の上話に

世津子の顔色が変っていきます。

明らかに動揺してる.......

そしてついに、みね子から父の写真を見せてもらった世津子は

思わず言葉を失います。



やっぱり世津子さんはみね子の父親のことを知っていたのですね。

そしてそれは隠さなければいけない存在だったのですね。

ここからみね子、世津子、そしておかあちゃんの苦悩の日々が始まりました。



つづく......






お人形で『ひよっこ』をやってみた (向島電機編その2) お父さん工場がなくなります


企業は過剰な在庫を抱えることになった昭和40年は

高度成長期で唯一の不況の年でした。

そしてその不況のあおりは

みね子達が働く向島電機にまで及んできたのです。


工場にいられなくなったみね子たちは

それぞれ別の就職先をみつけて歩み出すことになりました。



工場稼働の最後の日

工場の設備や備品を引き取りに来た業者が仕事を始めようとした矢先、

誰よりも頭が良くてしっかりしていた豊子の心の糸が切れました。

なんと工場の作業場の鍵を全部閉めて

中に立てこもってしまったのです。




やだ.....やだ、絶対やだ!

やだ....やだ...やだ。

やだ....やだ...。やだ....。

絶対やだ〜〜!」

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「豊子どうしたの?開げで!」

「豊子。どうしたの?あんた。」

「豊子、お願い、開けて。」


「豊子、どうしたの? こんなごとしたって......。」


仲間達が心配そうに、工場の窓から豊子に呼びかけます。

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「わがってる。わがってる。こんなことしたって、

何にもならねぇってのはわがってる。

わがってるんじゃ!

しゃべりたいんだよ。嫌だってしゃべりたいんだよ。

誰にがはわかんねぇけど、おれは嫌だ。

みんなと一緒に働きてぇ。

ここはおらが本当の自分でいられる所なんだ。

今までそったな所はねえ。

だからこの工場で、乙女寮で、仲間たちで、

一緒に笑って、一緒に泣いて....。一緒に悩んでくれて.....

そんなの初めてだったんだ.....。初めてだったのに.....。

なして、なして、みんなと一緒にいちゃいげねえの?

なしてここで働いではいげねえの? なして?



今までどんな辛い境遇に置かれても

ずっと我慢し続けて『良い子』でいた豊子が

初めて自らの運命に抵抗をしました。

工場が閉鎖するのは嫌だという気持ちは

ここで働いている仲間達だって、みんなも同じ気持ちのはずなのに

何でそんなにみんなは物わかりがいいの?

それはね、嫌だと言ったって、自分たちはただの使われの身。

自分たちではどうすることもできないし、

松下さんや愛子さんを困らせることになる。

みんなはそれを知っていたから

何にも言わないで素直に事実を受け止めたんだよ、豊子。


誰よりも勉強が出来てしっかりしていた豊子だけど

本当はまだまだ子供だったんですね。

そして子供だからこそ、

みんなの気持ちを遠慮なく代弁できたのでしょうね。



泣きながら工場に立てこもる豊子。

泣きながら心配そうに見守る仲間達。

工場を取り壊そうとする業者に頭を下げて

あの子の気持ちもわかって欲しい。

納得して自分から出てくるまで

もうちょっと待ってあげてと頼む松下さん。



みね子は言います。

「豊子、私だって嫌だよ。

大好きだったから。そこが。

自分の席にすわって、仕事すんのが大好きだった。

最初は全然できなかったけれど。

でも頑張って、負けなかった場所だからさ。

でもね、豊子。

悲しいけど、なぐなんないよ。

なぐなんない。私達がずっと忘れないでいれば

工場はなぐなんない。ずっと。

ずっとなぐなったりしないよ。そうでしょ?豊子。

それにさ、私たち決めたでしょ?

最後まで笑っていようって。

それが私達らしいねって。約束したでしょ?

違う?豊子。」



みね子のそんな言葉に

ついに豊子が自分から作業場の扉の鍵を開けました。

真っ先に豊子に駆け寄ったのは

いつもいがみ合っていた澄子でした。

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思えば工場閉鎖の朝から、豊子の様子が変でした。

いつもきびきびと動いていた豊子が、澄子のようにもたもたしていたり

朝食を大口でバクバク食べていたり、

仕事で初めてミスしたり.....

この頃から、自分は『良い子』でいるのはもう嫌だ、

自分の気持ちに偽りなく生きていきたいと思っていたのかも知れません。

今まで我慢して、頑張って、ようやく居心地のいい自分の居場所を見つけたのに

それが音を立てて崩れていく......

まだ中学を卒業したばかりの女の子。

豊子の気持ちを考えると、私までいたたまれない気持ちになりました。



でも、こんな騒動を起こした豊子にかけた

愛子さんの優しくて思いやりのある言葉が心にしみました。


「やれやれ。豊子ちゃんも世話が焼ける子だったんだねぇ。」


この言葉を聞いて豊子はきっと嬉しかったに違いないと思いました。

今まで『良い子』であることを求められて

それに応えようと『嫌だ』と一度も言ったことがなかった豊子が

みんなのように愛子さんにわがまま言ったり、困らせたりできて

ようやく普通の16歳の女の子に戻れたんだもの。

愛子さんの言葉はそれを証明してくれたのです。



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工場が閉鎖され、次々と新しい職場や寮へと旅立っていく仲間たち。

時子は銀座の大きな喫茶店で住み込みの仕事をすることになり

豊子は食品会社への就職が決まり

幸子は雄大先生のいる大きな工場へ......

こうして一人、また一人...と

乙女寮から仲間たちが去って行きました。

澄子とみね子は両国にある石鹸工場へと再就職が決まったのも束の間

年の瀬も迫ったある晩

みね子達が働く予定だった石鹸工場の社長さんから

業績不振で一人しか採用できなくなったと言われ

みね子は澄子に就職口を譲ることになりました。

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年の瀬に失業者となってしまったみね子。

途方に暮れながら向かった先は、あのすずふり亭でした。

みね子にとって、すずふり亭は

お腹を満たしてくれるだけでなく

疲れた心や身体を癒してくれるオアシスのようなものだったんですね。


そしてそのすずふり亭のオーナーである鈴子さんの計らいで

みね子はそこで働けるようになりました。


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すず子さんの「うちで働いてみる?」って言葉に

よっぽど嬉しかったのでしょう。

すぐにカウンターに駆け寄って

このお店で働く宣言をしたみね子。



いがったね、みね子。

ここだったら、もしかしたらお父ちゃんが

ひょっこり顔を出すかも知んないよね。



がらんとなった乙女寮で

愛子さんと二人きりで過ごす大晦日。

知らないアパートで一人で年越しするのも淋しいからと

みね子は愛子さんと二人で年越しゾバを食べながら

紅白歌合戦を見ました。

愛子さんは倍賞千恵子が好きで

みね子は森繁久彌が良かったそうですね。

夏ばっぱ、いやすずふり亭の鈴子さんは

やっぱり橋幸夫でしょうか...
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この1年、いろいろな事があったよね。

ふと、みね子は思います。

愛子さんって、東京のお母さん代わりじゃやっぱしなくて

東京のお姉ちゃんだなって。

お母さんなら言うのにためらってしまうことも

お姉ちゃんならなんとなく相談できます。

私は長女なのでいつもお姉ちゃんが欲しいと思っていました。

あ〜あ〜、愛子さんみたいなお姉ちゃんが欲しかったなぁ......。


愛子さんからの思いがけないプレゼントで

久しぶりに奥茨城の実家へ戻ったみね子は

心も身体もすっかり元気になって

東京へと戻ってきました。

これからすずふり亭のお仕事と、初めての一人暮らしが始まります。


次回へと続く.....



ドラマはもうとっくに終ってしまったので

お人形版ひよっこは、ここからはさっと流す程度にしようとしたのですが

せっかく前半あれだけセット作りを頑張ったんだから

後半もできるだけ頑張ってみようと思って

今、すずふり亭の内装を作っています。

仕事の合間の作業に加え

材料を調達するのに時間がかかってしまい

なかなかトントン拍子に事は運びませんが

ドラマのお話を思い出しながら

セットを作るのがとっても楽しい!

この分だとひよっこ最後のシーンまで

10月中にはとても仕上げられません。

下手したら今年いっぱいかかっちゃうかも?!

そうならないようにがんばっぺ!







お人形で『ひよっこ』をやってみた (向島電機編その1) ご安全に〜


こうしてみね子達を乗せた集団就職列車は上野に到着しました。

子供達はそこで、それぞれの就職先へと旅立って行きます。

新しい生活に不安を抱えながら、

引き取り手を待つ子供達........

そんな中、三男の就職先の日本橋の米問屋の主人が

三男を引き取りに来ます。

2人に別れの挨拶をする間もなく、

せっかちな米問屋の主人の後を追いかけて行く三男に

あわてて声をかけるみね子と時子。



「三男! 頑張ろうね!


「三男!負けんな。 負けたら嫌いになっかんね!」


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時子の、負けたら嫌いになっかんね!は

三男にとっては最高のエールになりましたね。

大好きな時子に嫌われるくらいだったら

どんな辛い事でも乗り切らなくっちゃね。



三男が立ち去ったあと、ようやくみね子達の就職先の

向島電機の寮の舎監を担当しているという女性が

引き取り手として現れました。

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ところがここで一悶着ありました。

初めて見る大都会の喧騒に不安いっぱいのみね子に

予期せぬ出来事が待ち受けていました。

なんと、みね子の名前だけが登録名簿に載っていないのです。

ショックで座り込むみね子に

時子と澄子が励まします。



「私......働げないのがな?

どうしよう.......。どうなるんだろう、私。

え.....帰んの?このまま?帰れないよ.....。

帰るわげにはいがないよ.....。

うう......いがないよ、帰るわげには......。」


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先週の予告で、向島電機でみね子が働いている姿を見ていたので

何かの手違いがあったけれど

最終的には無事に就職できるとわかっていましたが

奥茨城の家族のために、そしてお父ちゃんのために

このまま帰るわけにはいかないと

不安に押しつぶれそうなみね子の気持ちを想うと

私までいたたまれなくなってしまいました。



ようやく工場と連絡がつき、名簿に記入漏れの手違いがあったことがわかり

みね子は無事に向島電機へと就職できることになりました。

みね子、時子、澄子、そしてもう一人、

とても優秀なのに、家の事情で高校へ進学できず

中学卒業後すぐに向島電気へと入社することになった

青森から来た兼平豊子の4人が

向島電機の乙女寮の新しいメンバーとして仲間入りをはたしました。


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同じ部屋になった寮の先輩ともすぐに打ち解けて

食堂で本格的なカレーライスを食べる乙女寮の新人4人。

うちで作っていたカレーライスとは全然違っていて、

都会的でまさしくプロの味。

ちよ子や進にも食べさせてあげたいなって

なんだか急にうちが恋しくなってきてしまったみね子......。

それと同時に、もう今まで慣れ親しんだ故郷から

自分はこんなに遠く離れてしまったんだと

カレーの味を通して実感したみね子。

きっと食べ終わるころには

しょっぱい味のカレーになってしまったんだろうなって

私までせつなくなってしまいました。



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翌朝から、みね子たちは簡単な説明のあと

早速仕事にとりかかります。


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朝礼のあと、一斉に唱和された『ご安全に』。

この挨拶、生まれて初めて聞きましたが

製造業や建設業界の現場でごく普通に使われているそうです。

ここ向島電機でのみね子の仕事はと言うと

ベルトコンベアーで流れてきたトランジスタラジオの基盤に

順番に細かい部品を取り付けていくのです。

その工程はなんと全部で80工程。

途中でひとつでもうまく取り付けられなければ

ラジオは鳴りません。

工場長の話をまともに受け、

この高度成長期に日本を背負って立とうと意気込んでいるみね子です。



お父さん.....。

どうやら私、日本を背負っているようで。

お父さん.....。

アイルランドに日本が負けたとしたら

それは私のせいかもしれません....。

アイルランドってどこですか?


相変わらず天然ボケのみね子に笑わされます。

工場の生産目標は1日に340台。

一人が一つの作業を行うのに、平均3.5秒が目標だそうです。

そんな話を聞いたら、不器用を自覚しているみね子は

プレッシャーで余計に萎縮してしまいますよね。



お父さん、3.5秒だそうです。

3秒って言われるだけでも

短いなと思うのに。

テン5って.......

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お父さん、アイルランドです.....。

日本の誇りです。

3.5秒です.......。

テン5です......お父さん.......。



突然ブザーがなり、ラインが止まってしまいました。

みね子がミスをしてしまったのです。


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次から次へとミスの連発で

不器用な自分がみんなの足手まといになっていると感じるみね子。

頑張らなくちゃと思えば思うほど

その思いは空回りして、さらにミスを誘い

落ち込むばかりです。

でもそんな時、愛子さんは笑顔で言うのです。

大丈夫!そのうちできるようになるから!



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でも、自分の不甲斐なさに落ち込んで

ささくれているみね子にとって

その励ましの言葉は、素直に心に響いてはくれません。

何の根拠もなく、笑顔で大丈夫って言われると

とどめのように腹がたってしまうようです。


でも、実はこの愛子さんは

かつてはこの向島電機で働いていた工員で

みね子以上に不器用で、上司にいつも怒鳴られたり

蹴られたりしていたそうです。

そう言われてみれば、

電話の応対中にお茶をこぼしてしまい

その処理を優先してしまい、電話中だったことを忘れてしまったり

大事な雇用者名簿に記入漏れがあるのに気がつかなかったり

駅では別の列車に乗って来た豊子のお迎えを忘れてしまったり......と

おっちょこちょいぶりはみね子以上かも....。

もしかしたらドジなみね子の姿に、

かつての自分を重ねていたのかも知れません。

だからこそ誰よりもみね子の気持ちをわかっていたし

「大丈夫、そのうちできるようになるから」という言葉は

みね子に向けられていただけでなく、

自分にも言い聞かせていたのかも知れないと思いました。



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そんな中、ある事件が起きました。

自分だけがミス連発をし、みんなの足を引っ張っていると感じている

みね子の気持ちを楽にしてあげようと、

時子がわざとミスをしてベルトコンベアーを止めたのです。

いつも冷静で的確な仕事をする時子が

みね子のためにわざとミスをしたのだということは

みんなにもわかっていましたが

それを豊子がとがめたのです。

そして、ミスを連発するみね子の性格を指摘し

ダメだしをし始めました。



『豊子。やめなよ。そういうの、腹立つ。

そうやって冷静ぶってさ。

いつでも冷たく言い放つのやめなって言ってんの。

自分は人とは違うって言いたいんでしょ?

そう見られたいんでしょ?


あんた見てっとさ、自分見てるみたいで嫌なんだよ。

イライラしてたんでしょ?

ずっと青森で。

自分はみんなと違うんだ、そう言いたくて仕方がない!

だからいつもトゲのある言い方するしかできない。

私は人とは違うんだって。こんなところで埋もれるのは嫌だって。』



『んなことねぇ!

あんたに、わだしの気持ちなんか........!』


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『わがるよ!私もそうだったからね!

でも私はそういうのやめた。

もう東京に来たんだから。

そんなふうにギスギスすんのやめた

だってそんなごとしなくたってもういいでしょ

東京に来たんだから。

そんなふうにいぢいぢ冷たいようなこと

言わなくてもいいんだよ!

新しい自分になれんだよ。

素直になりなよ!』



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ついに、時子と豊子のケンカが始まります。

貧困の家庭に生まれ

学年1番の成績にもかかわらず、高校へ進学することができなかったことが

豊子の心に深い影を落としていたのです。

そんな自分を惨めに思いたくないから心を閉ざし、

自分は能力のないみんなとは違うんだと強がることで

かろうじて自分を支えていた豊子。

でも、時子の熱い言葉によって

氷のように閉ざされた心が少しずつ開いていきました。

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この夜の騒動は今まではお互いにさぐりあっていた同部屋の乙女達が

初めて自分をさらけ出して本音で語り合い

お互いの理解を深めることができた感動的なシーンでした。

(熟睡していた澄子以外....)

まさに雨降って地固まりましたね。

この事がきっかけで

部屋の乙女たちはさらに強い絆で結ばれて行ったのです。

時子の、真正面から人と向き合い

時には優しく、時には厳しく友達を引っ張って行く姿勢は

後に時子がツィッギーコンテストの時のスピーチで言った

『女の子の未来は私に任せて!みんなついてきて!』に通じます。



時子と豊子の涙の抱擁。

どんなに感動的なシーンが繰り広げられているのか

この目で見たいのに、

時子や豊子と一緒に感動したいのに、

自分のために言い争っている時子と豊子に気まずくて

眠ったたフリをして布団から出るに出られないみね子の心の声や

みね子と時子のボケとツッコミ。

そしてこんな騒ぎの中も微動だにせず、熟睡している澄子.....。

泣いたり、笑ったり、しんみりさせられたり.....と

この回のシーンは

数ある「ひよっこ」のシーンの中でも

大好きなシーンのひとつです。



そして、翌朝、同部屋の先輩、幸子が言いました。


「時間がかかってもいい、遅れてもかまわない。

その遅れは仲間たちが取り戻す。

だから仲間を信じて....」


そしてその日、初めてみね子がミスをせずに

一度もベルトコンベアのラインが最後まで止まることなく

一日を終えることが出来たのです。

みんなへの信頼感に安心感が加わったことで

今までの不安や焦りが払拭され

平常心で作業ができるようになったからだと思います。



初めてもらったお給料袋を手に

売店で売っている可愛いお洋服に胸躍らせるみね子。

でもお給料のほとんどを実家に仕送りするために

買いたいものを我慢しなくてはなりません。

そんなことわかっているけれど

買いたかったけどあきらめた洋服を

何のためらいもなく買っていく同僚を見て

悲しくなってしまいます。

そんなみね子の気持ちを誰よりもわかっている時子たちは

そっとみね子を気遣います。


そんな中、みね子に思いがけず小包が届きました。

そこには、仕送りするみね子へのねぎらいと

お母ちゃんの手作りのブラウスが入っていました。

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忙しい仕事の合間を縫って作ってくれた

お母ちゃんのブラウスは

売店で売っているどんな高価なお洋服よりも素敵なものに

見えたことでしょう。

お給料のほとんどを仕送りするみね子のことを

お母ちゃんはいつも心配しているのですね。

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お母ちゃんの愛情が嬉しくて涙するみね子を

後ろでそっと見ていた仲間達。

まるで自分のことのように仲間を心配し

共に笑い、共に泣きくことのできる

素晴らしい仲間を得て

みね子は自分の置かれた状況下の中で

一生懸命頑張ろうと思うのです。





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話は変りますが、奥茨城にあるというみね子の実家。

奥茨城とは架空の地名で

ロケのあった場所は高萩市というところだそうです。

人が実際に住んでおられるそうなので

詳しい住所は明らかにされてはいませんが

google mapの航空写真を高萩市にセットして

空からついに見つけることが出来ました。

そこで8月の某日に、みね子の実家の近くまで

ドライブに行きました。



山奥ということもあって、車1台しか通れないような狭い道を

対向車がこないことを祈りながら走り続け

見慣れた橋を渡ると.......ありました!

みね子の実家が........。


お母ちゃん、じいちゃん、

みね子だよ!



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実際にこの家に住んでおられる方がいらっしゃるので

遠くからの撮影にしましたが

この赤い屋根の家から、今にもちよ子や進が飛び出してきそうです。

じいちゃんは、前の畑で野良仕事してるかな?

我が家のみね子も、奥茨城の実家に里帰りできて大満足の1日でした。


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この記事を書いている途中で

『ひよっこ』は最終回を終えました。

今は、みね子達の余韻に浸りながら

『お人形でひよっこをやってみた』を展開して行ってます。

様々なシーンの中で、私はこの向島電機/乙女寮のエピソードが

一番好きでした。

次回、もうちょっとこの続きを撮影しながら

最終章のすずふり亭のエピソードまで

駆け足でやっていきたいと思います。

時間的なこともあって、

すずふり亭のエピソードは、今までに比べると

さっと流すだけになってしまうと思いますが

もうしばらく、おつきあいいただけると嬉しいです。




*Profile*

rikarinn

物心ついた時からお人形と暮らしていた管理人のrikarinnが
大好きなお人形やアンティーク雑貨の事などを綴っています。
2001年に立ち上げた本館サイト「Myprecious dolls」は
現在リニューアル準備中なので
当面の間、更新はこちらのブログにて行っています。

※当ブログ内の写真や文章の無断転載・転用
及び二次使用はご遠慮願います。

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